稟議書の書き方と例文|基本項目ごとに何を書くかを解説
稟議書は、購入や契約、施策の実施などについて、組織内で承認・決裁を得るために作成する書類です。
何について判断を求めるのかを明確にし、理由や費用、根拠となる情報を記載します。必要な項目や説明の詳しさは、申請内容や組織のルールによって異なります。
例えば備品購入であれば、購入する物品や金額に加え、なぜ購入が必要なのか、数量や購入先をどう決めたのかなども、申請内容に応じて説明が必要です。
稟議書の基本項目と書き方を、備品購入の完成例文と、契約・システム導入などの応用例を交えて解説します。
ご自身の申請内容に合わせて、何をどこまで書けばよいかを確認してみてください。
この記事のポイント
- 承認・決裁を求める内容と、必要な理由・費用を対応させる
- 理由や効果は抽象的な表現だけで終わらせず、判断に使える情報を書く
- 例文は組織の書式と実際の申請条件に合わせて読み替える
稟議書の書き方で最初に整理したいこと
稟議書を書き始める前に確かめたいのは、何を承認・決裁してほしいのかという点です。
購入や契約の実施内容と、なぜ必要なのかという理由を分けて考えます。
例えば機器を購入するなら、「何を何台購入するか」と「その台数が必要になった事情」は別の情報です。
過去の稟議書を参考にする場合も、理由や金額が今回の申請条件に合っているかを確認します。
稟議の意味や承認・決裁までの基本的な流れを確認したい場合は、「稟議・稟議書」の解説も参考になります。
稟議書の書き方|基本項目ごとに何を書くか
記載項目は組織の書式や申請内容によって異なります。
代表的な項目と、その情報が何の判断に使われるかを見ておきましょう。
| 項目 | 書く内容 | 判断・確認の手がかり |
|---|---|---|
| 起案日・申請日 | 起案・申請した日付 | いつ起案・申請されたか |
| 所属部署・申請者 | 所属部署、氏名など | 誰からの申請か |
| 件名 | 申請内容を簡潔に示す名称 | 何についての稟議か |
| 申請内容 | 購入・契約・実施する具体的な内容 | 何を承認・決裁するか |
| 目的、背景・理由 | 実現したいこと、現在の状況、実施が必要な理由 | 何のために、なぜ今回実施するか |
| 費用・条件 | 金額、内訳、数量、期間、支払条件など | 費用や条件を判断する材料 |
| 期待する効果 | 実施後に見込まれる業務や作業の変化 | 実施によって何が変わるか |
| 実施時期・期間 | 購入・開始・導入の予定日、契約の開始日・終了日など | 時期や期間の妥当性 |
| 添付資料 | 見積書、仕様書、比較表など | 本文の根拠 |
※必要な項目は申請内容によって異なります。記入欄がまとめられている場合や、日付・申請者情報などが自動入力される場合もあるため、組織の書式に合わせて記載します。
以下では、件名や申請内容など、書く内容を整理したい項目について、具体例を交えて説明します。
件名
件名は、何について承認・決裁を求めるのかが分かるように書きます。
例えば「備品購入について」よりも「営業部門で使用するノートパソコンの購入について」とした方が、購入対象が具体的に伝わります。
申請内容
申請内容には、承認・決裁してほしい内容を具体的に記載します。
備品購入であれば品名や数量、業務委託契約であれば契約先や委託する業務の範囲など、何を実施するのかが分かる情報を示します。
目的、背景・理由
目的には実現したいことを、背景・理由には現在の状況と、実施が必要な事情を記載します。
例えば機器の更新なら、目的は「新たに使用する業務用ソフトウェアを利用できるようにすること」です。
「現在の機器はソフトウェアの動作要件を満たさず、利用できないため、対応機器への更新が必要」と続ければ、背景と理由も伝わります。
追加購入では、利用人数の増加や現在の台数では足りない事情を示します。
購入先や契約先の選定理由が必要な場合は、価格・仕様・対応条件など、比較した内容も判断材料です。
費用・条件
申請対象となる金額と内訳を、見積書や契約案に基づいて記載します。
物品購入では単価・数量・合計額、継続契約では初期費用や月額費用、契約期間などが主な確認項目です。
税込・税抜の別や支払条件も示し、今回承認を求める費用の範囲を明確にします。
期待する効果
期待する効果には、実施後に業務や作業がどう変わる見込みかを記載します。
申請内容によっては、現在の業務を継続するために必要な理由も判断材料です。
追加費用や業務への影響など、判断に関わる注意点がある場合は、本文や添付資料で補足します。
効果を数値で示す際は、実測値と試算値の区別や計算の前提が、根拠を確認する手がかりになります。
実施時期・期間
購入日、契約開始日、導入予定日など、実施する時期を記載します。
業務委託など一定期間にわたる申請では、契約の開始日・終了日も確認できることが大切です。
更新期限などの制約がある場合は、希望時期とその理由を合わせて示すと、なぜその時期に実施する必要があるのかが伝わります。
添付資料
見積金額の根拠には見積書、物品の仕様には仕様書、複数候補の選定理由には比較表など、本文の内容に対応する資料を選びます。
資料の有無だけでなく、本文と添付資料の記載内容が一致しているかも確認します。
稟議書はどこまで具体的に書けばよいか
稟議書は、必要な項目が埋まっていても、説明が抽象的では判断に必要な情報が伝わらないことがあります。
理由・費用・効果について、どのような情報を補うと具体的になるのか、記載例で比較します。
※各行は、それぞれ別の申請を想定した例です。
| 項目 | 抽象的な記載 | 具体化した記載 | 書き方のポイント |
|---|---|---|---|
| 理由 | 業務効率化のため、機器を追加購入したい。 | 新たな業務の担当者が増えるため、共用機器だけでは利用待ちが発生し、必要な時間に作業ができない。対象業務用の機器を追加購入したい。 | 追加が必要になった事情と、現在の使用状況を結び付ける |
| 費用 | 導入費用:30万円 | 初期設定費:10万円、利用料:月額2万円×10か月=20万円。今回の申請対象額は合計30万円。 | 内訳と、今回申請する費用の対象期間を示す |
| 効果 | 業務効率化が期待できる。 | 紙の申請書を手渡しする作業を減らし、申請状況を画面上で確認できる運用を目指す。 | どの作業をどう変える見込みかを示す |
※費用欄の金額・期間は記載方法を説明するための計算例です。10か月分を申請する設定で、契約全期間の費用や実際の価格を示すものではありません。
実際の稟議書には、担当人数や現在の使用状況など、機器の追加購入が必要な理由を裏付ける事実を記載します。費用を正確に示すには、見積書や契約条件で金額と内訳を確認することが大切です。
導入後に業務がどう変わるかは、実際の使い方に沿って説明します。削減時間などを試算する場合は、現在の作業時間や計算の前提を添えると、数値の根拠が伝わります。
稟議書の書き方を完成例文と応用例で確認する
稟議書に記載する内容は、何を申請するかによって変わります。
まずは備品購入の例で各項目の書き方を確認し、続いて契約やシステム導入など、申請内容に応じた書き方を紹介します。
備品購入の稟議書例文
以下は5台の業務用ノートパソコンを更新する設定で、項目のつながりを示したモデルケースです。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 件名 | 業務用ノートパソコン5台の購入について |
| 申請内容 | 既存の業務用ノートパソコン5台を更新するため、同数の購入を申請する。 |
| 目的、背景・理由 | 業務に必要なソフトウェアを、推奨動作環境を満たす機器で使用できるようにする。現在使用している5台は推奨動作環境を満たしていないため、対応機器への更新が必要となっている。 |
| 費用 | 単価12万円(税込)×5台=合計60万円(税込) |
| 希望時期 | 2026年11月中 |
| 想定添付資料 | 購入予定機器の見積書・仕様書、現行機器と必要な動作環境の比較資料 |
※購入台数・理由・金額・時期は記載方法を示すための設定です。添付資料も想定例であり、実際の購入記録や確認済み資料ではありません。
実際の申請では、使用するソフトウェアの動作要件と購入予定機器の仕様を照合し、見積書などの資料に基づいて金額や数量を確認します。
購入先・選定理由や予算区分など、組織のルールで求められる情報も記載します。
申請内容に応じた稟議書の書き方
契約では委託範囲や契約期間、システム導入では解消したい業務上の課題、新しい施策では実施目的や対象者が判断材料になります。
以下では、それぞれの説明を短い記載例で示します。
業務委託契約:委託範囲と期間・費用
業務委託契約の申請では、委託する業務の範囲と契約期間、発生する費用を示します。
定期的なデータ入力業務を委託する想定なら、申請内容は次のように書けます。
申請内容の記載例
定期的な帳票データの入力業務を外部委託する契約の締結を申請する。委託対象は指定された帳票の入力作業、契約期間は12か月。委託費用は月額10万円、12か月の総額は120万円。
※業務内容・期間・金額は記載方法を示すための設定例で、実際の契約事例や価格相場ではありません。
選定理由が必要な申請では、契約先ごとの対応範囲や条件など、実際に比較した情報を補います。
システム導入:現状の課題と導入目的
システム導入では、対象業務で起きている問題と、導入によって変えたいことを結び付けます。
導入理由の記載例
紙で回付している申請書について、承認状況を確かめるたびに担当者へ問い合わせる運用を見直したい。申請状況を画面上で確認できる仕組みの導入を申請し、進捗確認にかかる作業を減らすことを目指す。
※書き方を示すための想定例であり、実在する組織の運用や導入成果を示すものではありません。
対象業務や利用範囲、初期費用・継続費用、導入時期などは別途補います。期待する効果も、導入予定の仕組みで実現できるかを確かめてから記載します。
ワークフローシステムの導入を申請する場合は、「導入で失敗しないための確認ポイント」を使い、操作性・承認ルート・導入後の管理などを事前に確かめると、導入目的や期待する効果の根拠を整理しやすくなります。
新しい施策:実施目的と対象者
新しい施策では、誰を対象に、何を、何のために行うかが判断の手がかりです。社内研修なら次のような記載が考えられます。
申請内容の記載例
新しい業務を担当する社員が必要な手順を理解できるよう、担当者向けの研修を実施したい。研修では業務手順と使用するツールの操作を扱い、実施費用は講師料と教材費を含めて20万円を見込む。
※研修目的・対象者・費用は記載方法を示すための設定例であり、実際の研修計画や成果ではありません。
研修の実施時期、対象人数、期待する習得内容などが判断に必要なら、申請に合わせて追加します。
書き終えた稟議書を提出前に確認する
提出前には、情報が書かれているかだけでなく、申請内容・理由・費用・資料の間に食い違いがないかを確認します。
提出前チェックリスト
☐ 何について承認・決裁を求めるかが分かる
☐ 申請理由が、今回の実施内容と対応している
☐ 金額・数量・期間は、見積書や添付資料と一致している
☐ 期待する効果を記載する場合、事実と見込みを区別している
☐ 必要な添付資料を用意できている
☐ 組織で定められた提出条件と確認先を確かめた
見積額と本文の合計が異なれば、計算や転記を見直します。申請理由と実施内容がかみ合わないときは、必要性の説明が十分かどうかも確認します。決裁権限や承認先など、組織固有の条件の確認先は、規程や所管部門です。
申請に適用される書類・提出条件を詳しく調べる場合は「稟議規程」、金額などに応じた決裁者の決め方を確認する場合は「決裁権限規程」の解説が参考になります。
まとめ|自分の申請に必要な情報をそろえて書く
稟議書を書く際は、承認・決裁を求める内容を明確にし、その理由や費用、根拠資料などを具体的に示すことが基本です。
記載例を参考に、申請内容や組織のルールに合わせて必要な情報をそろえます。
書き終えた稟議書は、提出前チェックリストを使い、理由と申請内容のつながりや、金額と添付資料の食い違いを確かめます。
不足があれば記載内容を補い、提出できる状態に仕上げましょう。
稟議書の回覧や提出後の進捗確認にも手間がかかっている場合は、関連記事「申請書を電子化する方法」で、入力・承認・保管までの電子化の進め方を確認できます。






